オンスロート限定戦考察その2
〜最高の選択とは?〜


 オンスロートブロックのテンションが最高潮に達している。5月の終わりにオンスブロック最後のエキスパンションスカージが参入し、世間は8月の限定構築大会に向けて躍動しているようだ。実際レシピや大会結果を見ても過去に類を見ないほどの多種多様なアーキタイプが存在しており、去年の青緑、サイカ、黒コンの3択という状況と比べると興味深いことこの上ない。個人的には準サイクリングっぽい赤白コントロールが強いかなーなどとおもってみたり。ただ、ゴブリンの鬼周りが怖いので《ショック/Shock(ONS)》はやっぱり必要かな・・・それとも《火花のしぶき/Spark Spray》??。などとカジュアルプレイヤーの筆者みたいのまでが構築戦の話をしてみたくなるほど、限定構築の環境は面白そうなのです。
 で前置きとは関係なく!久しぶりにオンスブロックの限定戦を友人らとやる機会を得たので、いままでやろうやろうと思ってできなかった試みをやってみた。それはドラフト中に特定の友人の後ろについてピックを見守るというもの。通常ドラフトの最中というのは、個人個人の密室プレイが基本なので、他人のピック中の葛藤や思考を生でみることはできない。しかしやはり他人がどういう基準でどういうカードをピックしているのかというのは興味あるわけで・・・なにか、レベルアップの足しになるかもしれないし。
 というわけでかねてから興味のあったべきべき君の背後についてドラフトを見守らせてもらうことにした。ピック自体はべきべきが行い、筆者は背後からそれをメモする。その間に相談は一切なし。リアクションもなし。あくまで「観察」と「脳内考察」のみでやりました。  今回は残念ながら人不足につき4ドラとなってしまったので参考になるかどうかは少し疑問ですが、全体の流れをみていて書きたい事が思いついたので記事にしてみました。どうか最後までお付き合いください。

オンスロートブロック・ブースタードラフト<ONS・LEG・SCO>
4人
《上家》さーき > べきべき&筆者 > ゴルドバ > 福駄《下家》

表の見方
◎: べきべき、筆者 共に選択
べ: べきべきが選択
筆: 筆者が選択


1stパック<ONS>
1周目








*第1ピック*
《ヒストロドン》
《天然の城塞》
《切り刻まれた軍勢》
《活力の魔除け》
《隔離されたステップ》
《平穏な茂み》
《圧倒する防衛者》







*第2ピック*
《共生する獣》
《疾風衣の侵略者》
《魂無き者》
《エルフの戦士》
《ゴブリンのそり乗り》
《締めつける綱》








*第3ピック*
《デスマッチ》
《ワイアウッドの伝令》
《陰謀団の執政官》
《ゴブリンの監督官》
《戦場の衛生兵》
《堕ちたる僧侶》
《ワイアウッドの誇り》








*第4ピック*
《金切り声のノスリ》
《漆黒の刃の死神》
《カタパルト兵団》
《エルフの戦士》
《栄光の探求者》
《不敬の祈り》
《詮索好きなゴブリン》
いきなりの極レア登場。筆者は問答無用で《ヒストロドン》だと思ったのだが、当のべきべきは《天然の城塞》or《圧倒する防衛者》かどうか悩んだ模様。この環境の白の強さを考慮した上のことらしい。結局《ヒストロドン》で。 パワー的に《共生する獣》で決まりだろう。べきべきもそう判断したらしい。いまだ白に未練が残るようではあったが・・・。 《共生する獣》とのシナジィ的に《デスマッチ》が一番と判断。ここで黒の充実ぶりに、黒の少なさを察知すべきだったかも。またファーストピックに《圧倒する防衛者》を選んでいた場合、ここで《陰謀団の執政官》(または《戦場の衛生兵》)が取れてクレリック路線で固められていたかも?? このへん微妙だがまぁ無難な選択か?白に走っていればと少し後悔。
2周目






*第5ピック*
《切り刻まれた軍勢》
《活力の魔除け》
《隔離されたステップ》
《平穏な茂み》
《圧倒する防衛者》




*第6ピック*
《魂無き者》
《ゴブリンのそり乗り》
《締めつける綱》





*第7ピック*
《戦場の衛生兵》
《ワイアウッドの伝令》
《堕ちたる僧侶》
《ワイアウッドの誇り》





*第8ピック*
《不敬の祈り》
《栄光の探求者》
《漆黒の刃の死神》
《詮索好きなゴブリン》
ここでべきべき&筆者共に悩む。《平穏な茂み》という選択肢も捨てがたいものがある。しかし、やはり生ものは重要ということで。 まぁパワー的にもこれで決定。一周してきたのが信じられないくらい。まぁ4ドラだし。 ここで運命の分かれ道。べきべきはヘイトに走り、筆者は素直に《ワイアウッドの伝令》。レギオン、スカージのエルフの強さを考えると《ワイアウッドの伝令》のような気がするのだが。このピックがレギオンで重大な意味を持つことになる。 まぁどうでもいいところ。お互いのヘイトの意識の差か。ただ、クレリックに走っていれば結構いけてたかもというのが無念でならない。
3周目



*第9ピック*
《活力の魔除け》
《圧倒する防衛者》



*第10ピック*
《締めつける綱》
《ゴブリンのそり乗り》



*第11ピック*
《ワイアウッドの誇り》
《堕ちたる僧侶》



*第12ピック*
《詮索好きなゴブリン》
《漆黒の刃の死神》
緑黒に路線が固まってきたので無難な選択。とはいえ、この順目で《圧倒する防衛者》を流すのは少々気が引ける。 ヘイト。青の流れのよさ(要は青がいない)ことを考慮すると《ゴブリンのそり乗り》をヘイトしたほうが良かったかも。2人そろって失敗。 地味に難しい選択。筆者は生もの好きなので少なくとも変異の期待できる《堕ちたる僧侶》を選択しいところだったのだが。 べきべきはヘイトを選択。筆者は変異の期待できる《漆黒の刃の死神》を選択。この辺が個人の差か。
 正直面白みに欠ける展開。《ヒストロドン》、《共生する獣》、《デスマッチ》とくれば緑黒は誰が見ても決定だし。 見所は《戦場の衛生兵》ヘイトと《ワイアウッドの伝令》の2拓か。基本的には《ワイアウッドの伝令》の方がデッキ強化にはつながると思う。 レギオン、スカージではエルフの強化は大いにありうるし、伝令のパワー自体も侮ることはできない。 ただ、《戦場の衛生兵》はヘイトという見方のほかに、比較的ゆるい白への転向という可能性も含んでおり、一概に無意味なヘイトとは言い切れない。 この辺は正直どっちが正しいのか判断つきかねるが、後の《森林守りのエルフ》の件を考慮すると《ワイアウッドの伝令》が正解だったようだ。  ただしこれは緑黒でつっ切った場合の結果であって、4手目で《カタパルト兵団》から白に流れていった場合はまた違う未来が待っていたと思う。 《デスマッチ》を取った後とはいえ、冷静に見てみると白のパワーには侮れないものがある。 流れも良いし。この辺の流れを読めるかどうかが、カード評価ができた後の強さの差になっていくのだろう。


2ndパック<LEG>
1周目








*第1ピック*
《皮を剥ぐ者》
《森林守りのエルフ》
《クローサのむさぼり獣》
《超大なベイロス》
《ワイアウッドの媒介者》
《宝石の手の汚染者》
《冠毛の岩角獣》







*第2ピック*
《梢を這うもの》
《アフェットの駆除屋》
《冷静なチャンピオン》
《クローサのむさぼり獣》
《暴れまわるマーロドント》
《冥府の世話人》







*第3ピック*
《エイヴンの戦鷹》
《ナントゥーコ自警団》
《天界の門番》
《熟達の刃の精鋭》
《ゴブリンの裏切り者》
《冥府の世話人》





*第4ピック*
《野生の守護人》
《煙吐く発動者》
《墓所スリヴァー》
《スカークの騒ぎ屋》
難問。オンスロートは手なりでいけたのにレギオンに入った瞬間にこれ。レギオンのナンバー1,2コモンの選択に加えて自分が緑黒。悩みましたねー。で、結論が《皮を剥ぐ者》。
 オンスロートで《ワイアウッドの伝令》を取っていれば《森林守りのエルフ》だった、とはべきべきの後の談。たしかにエルフが強いのはわかるのだけど他に使えるエルフが取れる保証もないし、単体の強さ的には《皮を剥ぐ者》の方が上、というのがドラフト時の共通意見。これは後ほど考察。
で、これがまた難問。今度はアンコモンのトップクラスが黒緑で。で、悩んだ挙句2人とも《梢を這うもの》。これも後ほど考察。ここが今回の最大の見せ場となりました。 不作パックでの判断。べきべきは飛行へのヘイト。筆者は素直に《ナントゥーコ自警団》。この辺は趣味かな。たしかに、ソルジャーを固め取りしてる人が居たらやばそうだったし。ただしヘイト後にも《天界の門番》が残ってしまっているので効果の程は少し疑問。 べきべきの判断は《野生の守護人》。筆者の判断は《煙吐く発動者》。発動者ゲーといわれたレギオン環境の認識の差か?1stピックで《森林守りのエルフ》を取っていればべきべきの判断もうなずけるのだが・・・。
2周目





*第5ピック*
《森林守りのエルフ》
《ワイアウッドの媒介者》
《宝石の手の汚染者》
《冠毛の岩角獣》




*第6ピック*
《アフェットの駆除屋》
《冷静なチャンピオン》
《冥府の世話人》





*第7ピック*
《天界の門番》
《ナントゥーコ自警団》
《ゴブリンの裏切り者》
《冥府の世話人》



*第8ピック*
《墓所スリヴァー》
《栄光の探求者》
で、問題なく《森林守りのエルフ》が一周してくる・・・。当然これはノーカウント。普通は取れません。 さらに問題なく《アフェットの駆除屋》がまわってくる。取るには取るがこれもノーカウント扱い。 さらにヘイト対象の《天界の門番》が回ってくる。《ナントゥーコ自警団》と迷うところだが、一度ヘイトしたのだから貫き通すべきか。 問題なく《墓所スリヴァー》だが、この順目まで《栄光の探求者》が回っているというのはやや気持ちが悪い。
3周目




*第9ピック*
《ワイアウッドの媒介者》
《冠毛の岩角獣》
《宝石の手の汚染者》



*第10ピック*
《冷静なチャンピオン》
《冥府の世話人》




*第11ピック*
《ナントゥーコ自警団》
《ゴブリンの裏切り者》
《冥府の世話人》
*第12ピック*
記録なし
微妙な選択ではあるが、《冠毛の岩角獣》は使われると結構いやらしいので、筆者はヘイト路線。べきべきは使いでのある《ワイアウッドの媒介者》を選択。難しいところ。 この辺はどうでもいいピックだが、《冷静なチャンピオン》はわりといやらしいのでヘイトで正解か? 取れたカード的に速攻向きではないので《ゴブリンの裏切り者》は取るまでもないか。むしろここで《ナントゥーコ自警団》が取れてラッキーというところ。 どうでもいいので覚えてない。
 つまらなかったオンスロートの後のレギオンは注目に値する選択肢が存在した。 まずは1stピック目の《皮を剥ぐ者》と《森林守りのエルフ》。 共に強力なカードであることにはまちがいないが、《皮を剥ぐ者》のほうは単体での強力さ、 《森林守りのエルフ》の方はシナジィによる強化が必要という点でちがってくる。 真に力を発揮したときには《森林守りのエルフ》の方が上だというのが、べきべき、筆者、共通の意識ではあったのだが・・・。 結局共に《皮を剥ぐ者》を選択したわけだが、環境内(特にレギオン以降)のエルフの数と強さを考慮してみると、 一定以上の確率で《森林守りのエルフ》が活躍できる環境が整っているといわざるを得ない。 レギオン、スカージには「すごいデキる」わけではないが、「そこそこデキるエルフ」=「回収しやすいエルフ」がコモンに数多い。 つまり、「レギオン開始時点で自軍のエルフの総数があまりない」というのは《森林守りのエルフ》を取らない理由にはならない、ということだ。 ここはGary=Wiseの言うとおり「《森林守りのエルフ》はみたら取れ」ということでFAにしておこうと思う。
 逆に2ndピック目の《梢を這うもの》と《アフェットの駆除屋》の選択。 同様の理由で《梢を這うもの》を取った後にビーストをとりまくれば良いじゃないかと思えそうだが、スカージでの異常なまでのビーストの少なさと、 有用なビーストはあっというまに卓から姿を消す、ということからして「レギオン開始時にある程度ビーストの数がそろっている」 のが《梢を這うもの》をピックする条件になりそうだ。 《森林守りのエルフ》と違って”増幅”は対戦相手のビーストの数を数えてくれないのも理由の一つになるかもしれない。 特に1st、2ndと連続で《クローサのむさぼり獣》を流していることで、下家にビーストへ向かわせるシグナルを発信していることにもなり、 スカージでのビースト確保はかなり難しいと言える。また4ドラという特殊な条件下ではあるが、 2パックという卓内で半数のパックのなかからビーストを回収できる機会を失っているとすると、エルフほど後のピックに期待するわけにもいかない。 難しいところだ。


3rdパック<SCO>
1周目








*第1ピック*
《長引く死》
《翼の破片》
《ドラゴンの牙》
《乱射》
《エイヴンの遠見》
《激情の共感者》
《分散の盾》





*第2ピック*
《ゾンビの殺し屋》
《ワイアウッドのかぎ爪》
《クローサの家畜商人》
《火炎流》






*第3ピック*
《死神頭のノスリ》
《朽ちゆく猛禽》
《刃の翼の虜》
《火炎流》
《罪の意識》






*第4ピック*
《すがりつく不死》
《屍肉喰らい》
《凍結》
《火花のしぶき》
《カローナの盲信者》
もはや黒緑以外やりようのない状況になればこの選択は必然。 これもスカージトップコモンということで問題なし。べきべきは飛行対策の要ということで《ワイアウッドのかぎ爪》と迷っていたが、このカードは1周してきてもおかしくないと思う。 《朽ちゆく猛禽》との2択で悩む。筆者も悩む。でもやっぱ飛行で決まりかな。 「これですよね?」と一発でべきべきに差し出された。少し《屍肉喰らい》との比較で迷ったが、やっぱりべきべきが正しいと思う。
2周目




*第5ピック*
《激情の共感者》
《ドラゴンの牙》
《分散の盾》



*第6ピック*
《ワイアウッドのかぎ爪》
《火炎流》




*第7ピック*
《罪の意識》
《朽ちゆく猛禽》
《刃の翼の虜》




*第8ピック*
《屍肉喰らい》
《火花のしぶき》
《カローナの盲信者》
渋い選択。ここは迷った。正直《ドラゴンの牙》の方が上かもと今では思ってる。んーーー。 火力をヘイトするというのも悪くなかったかもしれない。けど《ワイアウッドのかぎ爪》自体有用なカードなので、自分の手を崩してまでヘイトに走るというのは得策ではなく。 筆者は秒で《朽ちゆく猛禽》だったのだけれど、べきべきはヘイトに走ったようだ。んーー、最低でも変異での活躍が期待される分、《朽ちゆく猛禽》の評価は高いと思うよ。 《カローナの盲信者》がこの順目まで残っているという時点でちょっとおかしいドラフトだが、《屍肉喰らい》で順当か?しかし《カローナの盲信者》ヘイトもありだとは思うが・・・。
 スカージではさしたる変動はなかった。 もはや緑黒路線は固まっており、緑黒の点数の高いカードを取っていけば良いだけだからだ。唯一《朽ちゆく猛禽》と《罪の意識》の選択だが、 筆者的には《朽ちゆく猛禽》が正解だと思う。ただこの辺は、たんなるカード評価の相違なのでさしてあげつらうほどの点ではない。

総括
 これは結果論だといわれるかもしれないが、レギオンで場の流れを読みきって2nd目に《アフェットの駆除屋》を取れるようになることが上級者への道なのではないかと思う。つまり、マニュアル通りのカード評価に従ったピックではなく、全体的な流れ(《クローサのむさぼり獣》を2匹流している)、環境への知識(スカージにはビーストが少ない)を総合した判断が問われるところなのだ。
 通常限定戦というとカード評価が話題の中心になりがちだが、実力的に一つ抜けたいと思うならばこの辺の流れに対する鼻が利くようにならなければならないと思う。 単体で強いカードと、シナジィによりすんごく強くなるカードの対決というのは、特にこのオンスロブロックでは頻繁に発生するものである。 そうなったときにそのシナジィを生かせるピックをしてきたかの分析、 そういう流れになっているかの察知能力、またそのシナジィに期待できる環境なのかがわかる知識、それらの力を試されることになる。
 また、2拓の場面に遭遇したときに「こういう理由だからこちらを選択する」という明確な理由を描くようにするべきだ。 もちろん客観的に。これがいかに難しいかは語るまでもないと思う(時間制限だってあるし)。  世界の一線で勝ちつづけている人たちと我々凡人の間には、細かいスキルの積み重ねで築き上げられた強固な壁が存在しているのは間違いなさそうだ。 カード単体での評価自体は少し経験を積めば誰にでもできる(もしくはネット上の情報を洗いまくってもいい)。 しかし、カード単体評価自体は単なる土台に過ぎない。それを踏まえた上で最高の選択ができるようにさまざまな要素を考慮する。 駆け引きを仕掛ける。常識にとらわれず、独自の判断でピックする。カード評価は必要なことだが、それにおぼれていては勝てないし、 何より限定戦でもっともエキサイティングな部分に触れることはできないだろう。

*限定戦で強くなるには型通りのマニュアルピックから脱却すべし!!*


因みに今回の緑黒デッキは4人中2位ですた。
 
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