オンスロートブロック限定戦
〜6マナ域からの攻防〜
■オンスロート環境最盛期
スカージが発売されて2週間ほどが経過した。いろんなところでスカージの評価やオンスロート環境の考察が行われており、今時がいちばん各地の記事を読んでて面白い時期だろうと思う。今現在の評価だとスカージでは黒>白>青>赤=緑とか、そんな感じだろうか?また青赤最強伝説の崩壊や、《ゾンビの殺し屋/Zombie Cutthroat》に関する考察、青強い説or最弱説など、まだまだいろんな猛者たちの持論や研究結果が楽しみなところだ。
で今回のテーマだが、スカージが発売されて何回かドラフトをやっているうちに負けたときのパターン、勝ったときのパターンというのが目に付くようになってきた。色の話を抜きにしてオンスロート環境全体の勝ちパターンについて考察してみたいと思う。
■前半戦〜3マナ域の攻防〜
オンスロート特有の変異という概念があるおかげで、3マナ2/2が前半での焦点であり、いかに変異を出すか、またいかに変異に対応するかが序盤の最優先事項であるかはほとんどの人が身にしみていると思う。これが「先手ゲー」といわれるこの環境の特徴であり、2マナ2/2や1/3、《希望の壁/Wall of Hope》や《ゾンビの殺し屋/Zombie Cutthroat》が重要視される所以でもある。先手の場合は、いち早く変異を起動できる優位をいかに維持するか、また後手の場合はいかにその不利を解消すべく前記の生物を展開したり、変異コストを相手に払わせてテンポを逆転させるかの駆け引きが必要となる。
某掲示板でも取り上げられていた《ゾンビの殺し屋/Zombie Cutthroat》と変異がぶつかった場合の対処については一度目を通しておく価値がある。ここで紹介しておこう。
例)
7ターン目
□状況
自分:裏向きの《ゾンビの殺し屋》をコントロール
対戦相手:裏向きのクリーチャーでアタック
《ゾンビの殺し屋》で対戦相手のクリーチャーをブロック
□対処法
A.ブロック成立後、Pay5Lifeで《ゾンビの殺し屋》を表に
B.ダメージスタック後、Pay5Lifeで《ゾンビの殺し屋》を表に
掲示板でもいろいろな議論がなされていたが、正解はAである。
ただし、ここでプレイング上注意しておかねばならないことがある。
それは必ずアクティブプレイヤーである対戦相手の行動をみてから「Pay5Lifeするか決めること」である。
例えば相手のクリーチャーが捨て変異だった場合、こちらはPay5Lifeすることでカードアドバンテージ(場に3/4が残るので)を得ることができる。
さらに相手のクリーチャーが《うなるアンドラック/Snarling Undorak》で、対戦相手が3マナを支払って表にした場合、こちらはPay5Lifeすることでカードアドバンテージ+テンポアドバンテージ(相手は3マナ払うことで7ターン目の行動ができなくなる)を得ることができる。
しかし、相手のクリーチャーが《枝折りロリアン/Branchsnap Lorian》(4/1)だった場合、こちらはPay5Lifeする必要は無い(どうせ相打ちなので)。
これはプレイング上の問題で、せっかく非アクティブプレイヤーなのだから、相手の状況を確認してからPay5Lifeの有無を決めろということである。実戦ではこちらが3 /4だからといって慌ててPay5Lifeを宣言してしまうシーンもあるだろう。
この例はA、Bのどちらが戦略上のメリットデメリットを持っているかという議論ではなく、序盤の3マナ域での変異駆け引き、およびテンポアドバンテージの取得の重要性を示しているといえるだろう。
3マナ域の攻防での《ゾンビの殺し屋》の強さは十分おわかりいただけていると思うし、《栄光の探求者/Glory Seeker》や《希望の壁/Wall of Hope》、《霧衣の壁/Mistform Wall》の重要さ、《スカークの猛士/Skirk Commando》か《乱打する岩角獣/Battering Craghorn》であるかの駆け引きについてはここでは省略させていただく。
では、、、、3マナ域にうまく届かず、土地事故で2マナ域で足踏みした場合にはどうなるのだろうか?
これは何回か限定戦をやったことのある人ならわかるとは思うが、時々このような状況には陥る。そしてオンスロ環境では2マナ域での足踏みは「即死」につながる。
これが「オンスロ環境土地18枚説」の所以であり、場合によりマナベースにもカードにもなるサイクリング土地が重要視される理由でもある。上記例のような3マナ域の攻防が最序盤の必須事項であるということは、
序盤の最重要課題が「3マナ域にいち早く達すること」であり、構築段階でスムーズに土地が3枚並ぶように構成することはもちろん、初手に土地が2枚なら大いにマリガンすべき理由ともなる。
***土地3枚を並べることは負けないための必須条件である***
とここでは極論しておこう。
■後半戦〜6マナ域の攻防〜
スカージ発売後に何回かドラフトをやっていて気づいたのは、「土地の足踏みをすると負ける」ということ。
逆に「土地がスムーズに並んだときは勝てる」。これで今回のネタが半分割れたも同然なのだが、オンスロ環境を見直してみると、6マナ以降のクリーチャーの性能やサイズがぐんっと上がっているのである。
スカージでの土地サイクリングクリーチャー(特に強いのは《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》あたりか)は、場に出れば環境を制圧できるだけの力を持っているし、《針撃ちゴルナ/Needleshot Gourna》、《グラクシプロン/Graxiplon》、《急襲する鉤爪兵/Swooping Talon》、そして各種サイクリング持ちのファッティは6、7マナ域から場に出ることができる。6マナといえば変異を一気に場に2体展開できるマナ域でもある。
いち早くこのマナ域に達した方が場を制圧できる可能性が飛躍的に高まっているといえるだろう。
序盤での3マナ域の攻防には手札のダンプだけでなく、変異コストを払うことでのやり取りも大いに考えられる。3マナ域での攻防でお互いがリソースを消費しあった後に、いち早く6マナ域の攻勢に切り替えられた方が第2段階目の主導権を握ることができるのだ。
ではいち早く6マナ域に達するにはどうすればいいのだろうか?実戦で遭遇した状況と脳内考察をミックスさせながら話を進めていこう。
□土地の枚数
もっとも簡単に6マナ域に達するには毎ターン土地を置きつづけることである。
6枚のドロー+7枚のハンドで土地を6枚置くということは、簡単に計算すればデッキの6/13を土地にすればいいということになる。
この辺の計算から「土地18枚は妥当な線」であるとわかるだろう。あるいは土地19枚でも良いかもしれない。
ただし逆土地事故(土地ばかり引いて負ける)を考慮すると、土地はなるべくタイトに収めたいところである。
そこで登場するのがサイクリングランドで、逆土地事故の解消をしつつマナベースも整えてくれるというわけだ。
サイクリングランドは土地0.5枚と数え、2枚取れたなら基本地形17+2、4枚取れたなら基本地形16+4というくらいのマナベースが丁度良いだろう。
□初期手札の土地比率
いち早く6マナ域を目指すという思考の場合、手札に土地2枚の場合はマリガンを考えるべきである。
以下、デッキ内土地が18枚で先攻の場合で考えるが、2回に一回土地を引いてくると考えると、3マナまではスムーズに土地を置ける確率は70%期待できるが、4マナ目では40%とややつまづく可能性がある。
5マナ域へのジャンプは確実に遅れると見ていいだろう。
初期手札に土地3枚の場合、4マナ目までスムーズにジャンプできる確率は85%。5マナ目で50%とまぁ考えていいラインと言えるだろう。
手札に土地4枚の場合は、5枚目で95%、6枚目で75%とほぼ6マナ域までは保証される。
手札の土地は3、4枚がベストで2枚はマリガンを考えても良い、と認識してよいと思う。因みに初手7枚で土地が2枚の確率は15%。1回マリガンまでで土地2枚の可能性は5%である。
□サイクリングランドの扱い
前項でサイクリングランドのデッキに占める割合に着いて書いたが、実戦ではどうだろうか?
場に置いた土地が3枚の状態で手札の土地がサイクリングランド1枚のとき、どう動けばよいのか。
6マナ目までの展開を考えたとき、これは置くべきである。とにかく序盤はカードを引くことよりも、場に土地を展開することを優先すべきだ。
早めのサイクリング土地の処理、特にやることが無い1ターン目のサイクリング土地の処理はよっぽど手札に土地が腐っていない限りは様子を見たほうが賢明である。
もちろんサイクリング土地の採用によりデッキ内の土地の比率が上昇しているはずなので、それを信じてさっさとサイクリングするという考え方もあるが。
また、土地サイクリング能力を持つクリーチャー(以下LCC(LandCyclingCreature))の扱いについても注意が必要である。
手札に4枚の土地とLCCがある場合は、あと4ターンのうちに土地を数枚引いてくることを考慮してLCCは温存しておくべきである。
しかし、手札に2枚の土地しかないような場合にはさっさと6マナ域への肥やしにするべきだろう。序盤にLCCをサイクリングする場合についてはこの辺の判断が必要である。
引いてくるのはあくまで土地なので、通常のサイクリングほど手札のスペルの充実に影響を及ぼさないのであるから。
因みにこの前、場に5枚の土地、手札には《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》という状況に出くわした。そして、《よじれた嫌悪者》を温存した結果、、、6マナに届かず、負けた。
これは半分賭けにでた結果ではあるが、自分がいつ6マナに達するのかというマナ・ロードマップを正確に把握し、今必要なものがスペルカードなのか土地カードなのかを判断できるかが、勝因につながるのだろう。
□マナブーストカードの扱い
緑に多いが、《ワイアウッドのエルフ/Wirewood Elf》や《爆発的植生/Explosive Vegetation》、《芽吹くツタ/Sprouting Vines》といったマナブーストカードは積極的に採用する価値がある。
序盤の生物展開でテンポを失う恐れがあるため最優先でマナブーストしていればいいというわけではないが、中盤の隙を突いて一回でもマナブーストを行うことができれば多少のテンポディスアドバンテージは挽回することができる。
6マナ域の攻防にいち早く達することはいうまでも無いが、各種「発動者」や《暴動/Insurrection》、《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》といった「役満」カードのプレイを視野に入れれば、マナブーストカードが腐るということはオンスロート環境ではありえないといえるだろう。
■マナは財産
3マナ域の攻防について各地で盛んに論議されているのを見ることで、このマナ域での駆け引きの重要性は十分窺い知れるだろう。
3マナ域の攻防はいわば前哨戦であり、オンスロ環境での戦いの必須条件と言える。
しかし、その後に訪れる6マナ域の攻防を制する事は勝つための条件となっている。
ドラフト、およびデッキ構築の段階では3マナ域の攻防を意識したカード選択と、6マナ域での攻防を意識したカード選択とを明確にする必要があるだろう。
手札のLCCやサイクリング土地をどう処理するかが勝敗の決め手となる場合もある。迷ったときは「6マナ域の壁」を意識してみよう。
***土地6枚を並べることは勝つための必須条件である***
と、いささか乱暴かもしれない極言で今回のコラムを締めさせてもらおうと思う。
戻る