Sliver戦略の是非
≪前書き≫
レギオンでは往年の人気クリーチャータイプ・Sliverが復活した。なぜこの時期にSliverが復活したのかということについては、「今まさにこの時だから」というしかないと私は思う。「クリーチャータイプ」というテーマを中心に取り上げたオンスロート環境の中で、同じ種族に自分の力を分け与えるSliverの能力は雰囲気にマッチしている。Sliverの生まれたテンペスト環境の中でSliver能力というのは異色だったが、オンスロート環境の中では多様な種族ギミックの1つとして迎え入れられるだろう。
本記事の題名に「Sliver戦略」と書いたが正確に言うとそれは誤りだ。むしろ「Illusion戦略」と呼ぶにふさわしいかもしれない。大雑把に言えば、Sliverの能力をIllusionでたっぷり利用してやろう、ということだ。
このSliver-Illusionのシナジィについては、スポイラーを読んだ時点でありかな、位に考えた。実戦で作られたSliver-Illusionデッキを先に紹介しておこう。
青白Sliver-Illusion(Soldier)
《希望の壁/Wall of Hope(LGN)》
《熟達の刃の精鋭/Deftblade Elite(LGN)》×2
《星明かりの発動者/Starlight Invoker(LGN)》
《カタパルト兵団/Catapult Squad(ONS)》
《白騎士/White Knight(LGN)》
《エイヴンの救い手/Aven Redeemer(LGN)》×2
《精油スリヴァー/Essence Sliver(LGN)》
《ダールの奉納者/Daru Sanctifier(LGN)》
《低地の足跡追い/Lowland Tracker(LGN)》
《護法スリヴァー/Ward Sliver(LGN)》×2
《輝きを放つ者/Glarecaster(ONS)》
《宝石の手の報復者/Gempalm Avenger(LGN)》
《アクローマの祝福/Akroma's Blessing(ONS)》
《映像の造形者/Imagecrafter(ONS)》
《セファリッドの抜け道魔道士/Cephalid Pathmage(LGN)》×2
《霧衣の夢幻/Mistform Dreamer(ONS)》×2
《激浪計画の指揮者/Riptide Director(LGN)》
《霧衣の金切り魔/Mistform Shrieker(ONS)》
《平地/Plains》×10
《島/Island》×7
この中で重要な役割を果たしたのは《護法スリヴァー/Ward Sliver(LGN)》だ。こいつのせいでIllusion(またはイメクラの能力でSliverにされた奴)が全て《万物の声/Voice of All(PS)》化する。また、IllusionはSliverのほかにもSoldier戦略にも貢献する。また、Illusionは相手のSliverの能力を盗むこともできる。ただし、デッキそのものの動きとしてはSoldierデッキとしての動きのほうが強い。この辺のことは後ほど記述する。
ここからはSliverの能力を一通り検証した後、Illusionを絡めたピックの仕方、Sliver-Illusionデッキの構築の仕方までを考察してみようと思う。
≪スリヴァー検証≫
※ただしLegionのパックは最後の一つなので、ここまでの段階である程度の数のIllusionが取れていることを前提で話をする。
※《クリーチャー名》:通常の点数:Illusionと共に使用するときの点数
白
《板金スリヴァー/Plated Sliver(LGN)》:5:6
Illusionがそこそこ取れているなら良い働きをすると考えられるが、他のスリヴァーに比べるとイマイチだ。他のデッキタイプでも軽視されているはずなので、Sliver重視とは言えども終盤のピックでかまわないだろう。具体的には《霧衣のウミツバメ/Mistform Seaswift(LGN)》よりもランクは下だ。
《護法スリヴァー/Ward Sliver(LGN)》:7:9
Sliver戦略には欠かせない存在。上で紹介した青白デッキの作者曰く、「Morphは無色なので単体の使い勝手はそこそこにとどまる」とのこと。とはいえ、Illusionの大半は飛行を持っていることからSliver-Illusionデッキではその点は解消される。この環境では除去が赤か黒に偏っているので、どちらかを宣言してしまえば除去スペルをシャットアウトできることになる。何よりプロテクションの偉大さを感じさせてくれるナイスガイだ。ファーストピックしてしまおう。
《精油スリヴァー/Essence Sliver(LGN)》:8:9
さすがレア、とういうか単体でもかなりの使い勝手を誇る。特にIllusionが大量に取れていれば価値は高まる。ファーストピックに値する。
青
《霧衣スリヴァー/Mistform Sliver(LGN)》:6:6
単体では2マナのIllusion。正直な話Illusionは事足りているのであまり役に立たないだろう。Sliver-Illusionデッキ内のサブタイプを考慮した上で投入するかどうか決めたほうがいい。ピック自体は中盤以降で十分。
《変容スリヴァー/Shifting Sliver(LGN)》:7:8
これもSliver戦略の中では要の存在となる。とはいえ大半のIllusionは飛行を持っているので、Illusionが充実しているのならその存在価値はやや下がる。とはいえ単体でもそこそこ戦える性能を持っている上、相手側に飛行クリーチャーや蜘蛛が控えている可能性もあるし早い位置でピックしてもいいだろう。
《神経スリヴァー/Synapse Sliver(LGN)》:8:9
レアらしい強力な能力を持つ。Illusionが1,2体いれば強烈なドロー能力によって勝利をもたらしてくれるだろう。ただし、どちらかというと《護法スリヴァー/Ward Sliver(LGN)》や《変容スリヴァー/Shifting Sliver(LGN)》のような能力のほうがデッキ自体にとっては必要なものなのだが。
黒
《墓所スリヴァー/Crypt Sliver(LGN)》:7:8
コモンの割にはそこそこの性能を誇る。とはいえIllusionがナイスブロッカー化するというやや後ろ向きな能力のため、他のアンコやレアのSliverからは格が落ちるか(あたりまえ?)。でも青絡みのデッキは膠着すればするほどギミックが働いて動きやすくなるため、膠着に貢献するこのカードの存在の意味は高い。コモンの中では最高の使い勝手を持っているだろう。中盤でのピックを期待したいが、取るものがなければ序盤でのピックもありえる。
《幽体スリヴァー/Spectral Sliver(LGN)》:7:8
Illusionはスリヴァー化するのにマナを喰うためやや使いづらさが目立つかもしれない。しかしBeastデッキにおける《うなるアンドラック/Snarling Undorak(ONS)》の貢献度を考えてみるとパンプアップ能力はかなり強力な武器となる事はわかるだろう。マナの充実してくる中盤に差し掛かるとこの能力だけでかなり優位にたてるはずだ。
《毒素スリヴァー/Toxin Sliver(LGN)》:8:9
やはりレアらしい強引な能力。特に白の軽減能力と組み合わさるとうんざりできるだろう。相手の蜘蛛や飛行のような邪魔なクリーチャーをこちらのクソ弱いIllusionと相打ちにすることができる。とはいえ実戦的な考え方から言えば、クソ弱いIllusionがアンブロッカブルになる、くらいの使い方に収まるだろう。それはそれでいい。
赤
《狩人スリヴァー/Hunter Sliver(LGN)》:7:7
挑発は使いこなせると結構いやらしい能力だ。相手のブロッカーの排除にもなるし、いやなシステムクリーチャーの先手を取ることができる(実際にはプレイの抑制になるだろうが)。ただSliver戦略の中ではこれよりも優先して取るべきものがある。具体的には《霧衣のウミツバメ/Mistform Seaswift(LGN)》よりランクは下になるだろう。
《刀刃スリヴァー/Blade Sliver(LGN)》:6:6
悪くはない能力だが、1点パワーがパンプするだけではちょっと物足りないだろう。どちらかといえば自身が3マナ3/2とそこそこのパフォーマンスなので、攻撃的な普通の赤デッキに採用されることが多いかもしれない。
《溶岩スリヴァー/Magma Sliver(LGN)》:7:7
能力的には悪くないだろうが、、、Sliverがそんなに場に並ぶとは考えにくいし、IllusionがSliver化するのにもマナがいるわけでそんなに重宝するとは考えにくい。タフネスがあがればなかなかのものだったろうが、そうは問屋がおろさなかったようだ。他のレアSliverはおろか、アンコモンSliverよりも実質的な価値は劣る。中盤以降に回っているようならピックはしておこう。単体での4マナ3/というサイズのせいで、他のプレイヤーがとっても価値はあるだろう。
緑
《活性スリヴァー/Quick Sliver(LGN)》:5:5
面白い能力だが・・・限定戦のSliverデッキにこの能力は必要ない。緑らしく「サイズが熊」とかだったら有用だろうが、そうでない2マナ1/1に用はない。
《樹根スリヴァー/Root Sliver(LGN)》:5:5
これも限定戦のSliverデッキには必要ない代物だ。むしろ構築戦のSliverデッキのサイドに居場所があるだろう(あるのか?)
《繁殖スリヴァー/Brood Sliver(LGN)》:7:7
能力的にはレアらしく、言ってみれば《スリヴァーの女王/Sliver Queen(ST)》の再来?というところか。しかし、限定戦のSliverデッキではもっと必要とされる能力がある。
見てみればわかるだろうが、Sliver的に言うと、白=黒>青>赤>>緑の順位つけとなる。青はIllusionがいるから必ず採用するだろうということを吟味すると、「Sliver戦略は青白または青黒」ということになる。もちろん青黒タッチ白、青白タッチ黒も考えられるし、後述する青赤スタートから青赤タッチ白、黒などということも考えられる。
≪実際のピックからみたSliver戦略≫
実際にSliverを念頭においたカードピックというのはしないほうがいい。というのはLegionは最後の1パックだけなので十分な数のSliverが取れることは保証されていないからだ(何事にも保証という言葉は適用できないだろうが)。具体的には、
最初は青赤狙い
をするのがオンスロート×2の環境では現実的といえる。そして、青赤がうまくいかなかったときの保険としてSliver戦略の意義があるのだ。最近ではすっかりオンスロート環境での青赤の強さが知れ渡ってしまっていて、卓の中の幾人かはその恩恵にあずかろうと考えていることも多い。ご存知のとおり青赤は際立った強さを誇るものの、卓の中で青赤狙いの人がかぶると壊滅的に弱いアーキタイプになってしまう。1パック目で青赤に走り、《溶岩使いの技/Lavamancer's Skill(ONS)》や《火花鍛冶/Sparksmith(ONS)》といった主要カードの流れが悪いようならば、2パック目からは青主軸はそのままで白と黒のカードに着目してドラフトを進めていこう。そして3パック目のLegionで優秀な白のカードとSliverをゲットするのが一番効率がい。また、そこからのピックによっては、SoldierかClericが新たな戦力として加わるだろう。(ありがたいことにClericは白と黒の共通のクリーチャータイプでもある)。
現実的な考えから言えば、SoldierかCleric(またはZombie)をIllusionで補佐し、そこにSliverというエッセンスが加わるという形になる。青白か青黒でまとまれば、前半の青赤狙いでピックで来た《ショック/Shock(ONS)》や《陽光の突風/Solar Blast(ONS)》をタッチでくわえても良いだろう(青白にとってはありがたい話だ)。特に白に挑発という新しい形式の除去が加わったことで、Legion以降は青白というアーキタイプが盛り上がってくると予想される。Sliverはそういう新しいタイプのデッキにすばらしい付随効果をもたらしてくれるだろう。
≪総括めいたこと≫
Sliver戦略とは「『青』中心のアーキタイプの新たな選択肢である」と言えるだろう。オンスロート×3環境では青のパートナーは赤以外には考えられなかった(赤は誰のパートナーにもなれるのだが)。しかしLegionが加わったことにより大幅に強化された白と各色のSliverによって、青は活きる選択肢の幅を広げたのだ。SliverはIllusionの存在によってその価値を高め、IllusionはSliverの存在によってさらに輝きを増す。SliverとIllusionの関係は、Goblinと《ゴブリンの王/Goblin King(7E)》のようなシナジィによって成り立っている。
オンスロート×3での評価だった「青は弱い」。これを覆すよな青の新たな活きる道。Sliver戦略(というかIllusion戦略)を是非頭の隅にとどめておいていただきたい。
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