俺とD.T.
D.T.とはPSのDarkSuspicionとMMのTangleWireによって相手を拘束しつつ、ダメージを与えて勝つデッキの愛称である。
現在でもこのデッキはマイナー路線気味であるが私はFiresやコントロール系にも耐性を持つ、優れたデッキだと認識している。
今回は自分がいかにこのデッキを構築するに至ったかのアプローチの軌跡をまとめてみようと思う。
■黎明期
D.T.の原型が生まれたのはウルザブロック全盛の時期だった。
2000年の2月頃に最初期バージョンのD.Tは生まれた。だがDもTもそのデッキには含まれておらず、しかも青単だった。
D.T.ver 1.0
4:SealofRemoval
4:Foodwink
4:Boomelang
4:Recind
4:CounterSpell
3:TenporalAdept
4:IndenturedJinn
4:RishardanAirship
4:Gush
25:Island
要はバウンスデッキだった。序盤からBoomelangやらFoodwinkやらで土地を戻しつづけ、TenporalAdeptまでつなげる。
先攻なら相手の行動を完全に押さえることも出来た。・・・が、後攻に回るとメッキリ弱いうえに一度ロックが途切れるともはや回復不可能。おまけに当時のメタがストンピィや白単速攻という時代であったためにほとんど勝てなかった。
結局、一緒に作っていた友人はExtravagantSpiritまで投入したバージョンを作成していたが私はこの段階でいったん投棄しまった。
だって土地破壊デッキのほうが強いって分かりきっていたから・・・。
■復活期
次にD.T.(というかバウンスブルー)を構築したのは2000年の秋頃。まさにウルザブロックがスタンダードから去り、インベイジョンブロックが参入した頃のことだった。
TenporalAdeptが消えたことによって完全にバウンスブルーは私の頭の中から消えていたが、一枚のカードを目にした瞬間に猛烈にバウンスブルーが組みたくなった。そのカードとは
GlowingAnemone(MM)。
4マナ域の土地バウンス生物である。
こいつはRecindの抜けた穴を埋め合わせてくれる上に、クリーチャーなのでSealofRemovalなどで再利用できる!
しかもフィニッシュの一端まで担ってくれそうな感じ。おまけにInvasionにはRecoilやDeliver/といったバウンス呪文まで用意されていたのである。
これは組むしかないだろう。・・・しかし以前から思っていた。このデッキにはパンチが足りない。戻して戻して戻して・・・最後にはいつも戻しきれずに負けるデッキなのである。
となれば手札破壊か?しかしStupor等いれていては本末転倒だ。ならば・・・
D.T.ver2.0
4:SealofRemoval
4:Foodwink
4:Boomelang
4:Recoil
4:Deliver/
4:GlowingAnemone
3:RishardanBrigant
3:Greel,MindReaker
4:Gush
2:YawgmothAgenda
16:Islan
4:SaltMarsh
4:Swamp
豪華20枚もの土地バウンスカードで序盤相手を縛り、たまりにたまった相手の手札をGreelで落とすというデッキだった。
コンセプトが決まるととても爽快だったが、やはり勝つことは出来なかった。それでもVer1.0よりははるかに進歩し見とおしの立ったデッキとなった。
これ以降もGreelで優位に立つ(勝つわけではない・・)ということをメインにマイナーチェンジを繰り返した。
■進化期
D.T.Ver2.1
3:SealofRemoval
4:Foodwink
4:Boomelang
4:Recoil
3:Deliver/
3:GlowingAnemon
2:WashOut
2:RishardanBrigant
3:Greel,MindReaker
4:PallaraxTide
3:Gush
1:YawgmothAgenda
16:Island
4:SaltMarsh
4:Swamp
PallaraxTideはこのデッキに容易に居場所を見つけた。
すでにBlueSkyでTideの拘束力を実感していたため、相手を拘束するこのデッキでは重宝するだろうと予測がついたからだ。
また、WashOutは中盤以降に絶大な力を発揮した。PallaraxTideとのコンボで数ターン絶対的な優位に立てることを発見したのもこのバージョンを試していたときである。
まだDもTも投入されていないが、色は青黒になり、徹底して相手を拘束する、相手に手札を貯めさせるというコンセプトに近いものになってきた。
だがやはりパンチ力の足りないのは目に見えており、友人からはGreelにこだわりすぎる、との指摘を受けながらもGreelディスカードロックにこだわりつづけていた。
実際、Greelを引くまで耐えきれずに崩壊する例や、Urza'sRageなどで容易に他界するGreelが目撃される例など、あと一歩の試合が多かったような気がしている。
■思考錯誤期
D.T.ver2.2
2:SealofRemoval
4:Foodwink
4:Boomelang
4:Recoil
2:WashOut
3:ReshardanBrigant
2:Greel,MindReaker
4:PallaraxTide
4:TangleWire
3:Gush
4:Opt
1:YawgmothAgenda
4:RishardanPort
9:Islan
4:SaltMarsh
4:UndergroundRiver
2:Swamp
ついにこの頃TangleWireを発見できた。
このあたりからWireやTideをバウンス呪文で戻して再利用する形式が生まれてきた。実際、TideやWireは相手の土地が4枚くらい並んだ状況でも数ターンの間あいてを拘束することが出来る。
世間ではTideはAnkofMishuraのお供程度にしか認識されていなかったため、Tideの拘束力を発見したことは大いなる成果だと思っていた。
このころから相手への拘束力もけっこう強くなり、一方的に相手をやりこめた試合も何度かあった。だがまだパンチ力の弱さは解消されておらず、GreelやBrigantが降臨する前に息切れしたり、パーマネントを展開されすぎて負けたりもした。
そう、このデッキは中速コントロール、一番中途半端なデッキなのである。しかもダメージソースの薄い・・・。相手を拘束できることは分かった。
しかし、相手のたまった手札が続くことで何か有利になるカードは・・・。
■完成期
D.T.ver3.0
4:Boomelang
4:Deliver/
4:Foodwink
3:RushingRiver
4:Dark Suspicions
4:FactorFiction
4:Opt
1:YawgmothAgenda
4:TangleWire
4:PallaraxTide
4:RishardanPort
4:UndegroundRiver
10:Island
6:Swamp
D.T.が(名前の通りに)完成したのはPSのスポイラーリストを眺めていたときだった。
このカードはまさに今までのバウンスブルーに必要なものだと一発で分かった。相手の溜め込んだ手札を捨てさせるのではなくダメージ源に出来ればその時点で勝負がつく。
いままでにViselingなども考えたことは合ったが、4マナにしては与えるダメージも少なく、タフネス2は容易に除去されると思って採用しなかった。
しかし、このカードは彼我の手札差が5枚近くあれば数ターンの間に勝負を決める力を持っている。
そしてそのような状況はいままでのバウンスブルーの戦歴の中で頻繁に発生していたのだ。
かくしてドローサポートをふんだんに用いた真のD.T.が完成した。このときはまだD.T.という愛称は無く、ダークタイドなどと呼んでいたものだ。
この後マイナーチェンジを加えてD.T.は微妙に変化していった。が、コンボデッキの域に近く、DarkSuspicionを引かずに息切れすることもあった。
もともとSuspicionは速攻デッキのダメージサポートとして周囲では期待されていた。ならばそのような使い方のほうが正しいのだろうか?正しいのかもしれない。
あるカードを発見したとき、このデッキはその性質を変えた。
■熟成期
D.T.ver3.1
4:Foodwink
4:Boomelang
3:WashOut
1:RushingRiver
4:PhyrexianScuta
4:DarkRitual
4:DarkSuspicion
3:BrainStorm
4:SlaightofHand
3:TangleWire
4:PallaraxTide
4:RishardanPort
4:UndegroundRiver
2:CityofBlass
1:ForsunkenCity
9:Island
2:Swamp
PhyrexiznScuta。
このカードが4枚そろったのはまさに運だった。それほど興味も無くトレードもしなかったのになぜかこのカードは私のカードプールに4枚納まっていたのだ。
せいぜい将来ゾンビデッキを作るときにでも使うか、と思っていた程度なのだがなるほど、たしかに4マナのダメージ源としては最大級の数値だ。
残念ながらScutaを発見したのは私ではなく、ネット上にいるどこかのデッキビルダーだった。
また、DarkRitualを採用したのもScutaに引きずられてだが、これも手札を減らすのに一役買うことになった。Suspicionと相性が良いのである。
またBrainStorm、Opt(今はSleightofHandだが)といった軽量で手札の量が増えないサーチカードを多用したのはOptBlueの影響だが、このデッキのコンセプトには割とあっていると思う。
他にもForsakenCityなど細かいギミックが搭載されているが、なにより速攻デッキとしてこのD.T.ができあがったことは一つの収穫だったように思う。
■変革期
D.T.ver3.2
4:Duress
3:BrainStorm
4:RushingRiver
2:WashOut
4:PlegueSpitter
4:PhyrexianScuta
4:DarkRitual
4:DarkSuspicion
2:Tsabo'sWeb
2:PallaraxTide
4:TangleWire
4:UndergroundRiver
2:SaltMarsh
5:Island
12:Swamp
その後、いくつかのデッキとスパーした結果、カウンター系に勝てないことが判明した。
やはり現環境ではカウンター系に太刀打ちできないようでは話にならない。そこでメタを絞り上げた結果、特定のデッキにかなり効き目のあるPlaugeSpitterとDuressを採用した。
そしてより黒メインにシフトした。ForsakenCityなどのデメリットを持ち合わせるカードを排除し、安定感を重要視した。
実はこの段階にバージョンアップする前のバージョンが存在していたが、いまはレシピが無い。その前バージョンに友人の意見をプラスし、さらに自分のアレンジを加えたのがこの3.2だ。
しかし思うのはうわさに聞く某有名デッキビルダーのバージョンに非常に似通っている・・・ということ。実はまだはっきりとそのレシピは見ていないのだが、これとそっくりならちょっと悲しいことだ。
そしてもう一つ思ったのがやはり友人に見せて相談したほうが良い結果が残せること。自分だけではリシャーダの港を抜いたりサーボの網を入れたりするアイディアは絶対思いつかなかっただろう。
***月日は流れ、今ではマスクスブロックはおろか、インベイジョンブロックまでスタンダード環境から姿を消している。
だがこれほど長い間調整を繰り返したデッキはそうはないし、この時の試行錯誤の渦が今の俺の構築の根底に流れていることを感じ取れている。***
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